沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
 落ち着いた雰囲気で将棋界のプリンスとしてカリスマ性を持つ匠は、常に気を張って生活している。イメージを壊さないように、甘党だという事さえ家族以外には知られていない。

 コンビニにお菓子を買いに行く時でさえ、キャップを被り顔を出来るだけ隠しているのだ。

 目の前で、嬉しそうにお菓子を食べている匠を見て、美羽は初めて年相応だと感じた。お風呂上がりの無防備な姿すら大人っぽく、まさか自分より5歳も下だとは思わなかったのだ。

 何か大きなものを背負っているような、匠の姿に少し切なくなった。

 それが、今のお菓子を食べている姿が、先程までと全く違うなんとも言えない可愛らしさを感じ、匠のギャップに美羽はドキドキしている。

 美羽も、恋愛初心者だ。そのドキドキの真相には気づいていない。
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