沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「明日は体操服を忘れないように。あとは、連絡帳を確認して下さいね」

「はい。あの〜」

「はい」

「美羽先生は、恋人はいますか?」

「はい⁉️」

 突然プライベートな質問をされ素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げてしまった。

「ずっと、気になってて……」

「パパ〜」啓太の声に邪魔された。

「今日はこれで失礼します」

 言いたい事だけ言った啓太の父は、啓太を連れて帰って行った。残された美羽は、複雑な気持ちになる。

 啓太の父親に対して、もちろん園児の父親以上に思った事はない。若くして、結婚と離婚を経験したのか、確か美羽と同じ歳のはずだ。いつも一生懸命啓太と向き合っている印象で、そんな事を言われるとは思っていなかった。

< 30 / 87 >

この作品をシェア

pagetop