沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「なんて答えたの?」

「答えてない。突然の事に驚いてるうちに、子供が待てなくて」

「助かったってわけか……」

 匠は内心で、燃え上がるような苛立ちを感じていた。美羽を誰にも渡したくない。ここで自分の気持ちが、はっきりした。今まで、将棋だけの人生で不満はなかったが、初めて将棋以外の事でも手に入れたいと強く望む気持ちを感じた。

「で?美羽はなんて答えるつもりだったの?」

「恋人はいないけど、私の中では啓太くんのパパでしかないって……」

「それで諦めるとは思えないけど……」

「えっ?」

「これからも、毎日顔を合わすんだよな?」

「それは……。園児の父親だから……」

「恋人がいるって言ったらいいだろ?」

「いないのに?」


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