沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「俺は、昨日どん底に落ち込むことがあって、あのままだったらどうなっていたか…昨日、美羽の声を聞いたとき、天使だと思ったんだ」

「そんな……」

「美羽に出逢って、助けてくれたのが美羽で本当に良かった。まだまだ頼りないかもしれないけど、俺と未来を一緒に歩いてほしい」

 美羽は、胸が熱くなる。こんなに胸に響く言葉が今まであっただろうか。まだ、成人したばかりの匠だが、内面は大人の男。合間に見せる可愛らしい部分も美羽の母性本能をくすぐる。

「今日、家に帰って一人だったらきっと憂鬱なままだったと思う。匠がいてくれて本当に嬉しかったの」

「美羽……」

 匠は美羽を優しく抱きしめた。

 お互いが初心者のふたり。こんなに人肌が心地よいのだと、同じタイミングで知った。


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