沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「すみません!」

 大慌てで走ってくる啓太の父親。

「パパ〜おそい!」

 啓太は、待ちくたびれて荷物も持たずに父親に向かって走っていく。

「あっ、啓太くん荷物!」

 美羽も慌てて荷物を持ち啓太を追いかけた。

 啓太は父親に飛びつき抱っこをしてもらっている。普段はしっかりしていても、まだまだ甘えたい年頃だ。父親もそんな啓太を優しい顔で見つめている。素敵な親子の光景だが…

「啓太くん荷物忘れてるわよ」

「あっ、みうせんせいありがとう。パパみたらうれしくて」

「首を長くして待ってたもんね。良かったね」

「うん」

「こちら、啓太くんの荷物です」

 美羽が荷物を差し出すと、啓太を片手で抱き直し、荷物ではなく荷物を持っている美羽の手を取った。

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