沈黙の戦い〜凛々しい棋士のギャップ〜
「気にした事ないけど、これからは美羽と一緒だから気をつけるよ。気になる事があったら言ってくれ。我慢とかしなくていいから。美羽が傷つくのだけは避けたい」

「ありがとう」

 匠の優しさが伝わる。保育園からの道程もふたりで歩いているだけで楽しく感じる。お互いが初心者の初々しいカップルには、何もかもが新鮮だ。

 数日前二人が出逢った公園の街灯が見え、美羽のマンションに着いた。自転車を置き匠は美羽と手を繋ぐ。

 少しの間でも触れていたい。匠にとって初めての感情。それは、美羽も同じで……。

 美羽は、部屋に入り匠にお茶を出し待っててもらう。男性の家にお泊りするなんて初めてで、何を持っていけばいいかすら悩む。

「俺、女性が普段から何を使うか全くわからないから、もし美羽が普段から使うものがあれば俺のマンションに置いててもらっていいから」

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