…しのみや……ほしぞら?
「入学してすぐに体調を崩して入院していたんだが、最近調子が良くなってきたから戻ってくることになった。四宮、知らない人もいると思うから自己紹介してくれ。」
男は少し照れたようにこめかみをかいて、それからまっすぐに前を見た。
「四宮星空といいます。”ほしぞら”とかいて”せいあ”と読みます。小さい頃から病弱なんですけど、仲良くしてくれると嬉しいです。」
自己紹介が終わると、小さな拍手が起こった。
「は-い。みんな仲良くしろよー。じゃあさっきの話の続きするな。今日は初日だから授業は午前で終わりだからなー。」
先生が話し終わると同時にチャイムが鳴り、先生は用が済んだと言わんばかりに教室から出て行った。
”せいあ”っていうんだ。
四宮君の方を見ると、たくさんの荷物を鞄から取り出していた。
クラスの何人かの女子たちは、話しかけようとしているように見える。
みんな物珍しそうに四宮君を見つめている。
真っ黒のサラサラな髪に、まん丸な目の可愛らしい顔立ち。
身長は、おそらくだが170cmはあるだろう。
158cmの私よりは絶対高いと断言できる。
手足が長く、スタイル抜群だが、体格はそれほど良く見えない。
「よー四宮。お前やっと退院か?」
「ああ、えーっと.........?」
「おいもう忘れたのか?去年の入学式で隣だった桜井だよ。」
「あー、桜井君か。思い出した。」
四宮君が教室に入って初めての笑顔を見せた。
「笑った......かっこいい。。」
どこからかそんな黄色い声が聞こえてくる。
外見だけで言うのも失礼かもしれないけど、私とは縁のない人なんだろうなと感じる。
窓を見ると、風がふいて桜の花びらが散っていた。
もう誰にも見られることの無い花びら。
それはまるで、ここにいる私みたい。

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