駅を降りて、蒸し暑いコンクリートの上をゆっくり歩く。
今の時刻は午後三時。
田舎道を、小石を蹴りながら歩いた。
しばらく歩くと、大きいアパートが見えてくる。
あれが、私の家だ。
三階建ての横に五部屋あるどこにでもありそうなアパートだ。
築二十五年と、新築ではないが田舎で土地が安いということもあり、家賃が安い。
階段を上がって奥から二番目の百十七号室の鍵穴に鍵をさす。
もちろん誰もいない。
「ただいまー。」
空の家に私の言葉は跡形もなく消えていく。
一LDKのごく普通の部屋だ。
私は、セーラー服から部屋着に着替えて髪を結んだ。
冷蔵庫の中身を確認すると、納豆一パックと使いかけのネギが一本、それから水と調味料だけしか入っていなかった。
あまり自炊はしないタイプだが、流石にこれだけだと正直きつい。
私は、メガネとマスクをつけて財布を手に家を出た。

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