あ

大好きな歌を歌って悲しさを紛らわせた。
そのあと親戚も父親もいなかった私は児童養護施設に入れられたが、児童内の環境の悪さに耐えられず、中学入学と同時に施設を出て一人暮らしを始めた。
初めはお母さんの貯金を使うことに躊躇して、施設でもらったお金で生活していたが、バイトができず勉強で手一杯の学生だった私は、徐々にお母さんの貯金を使うようになった。
施設でもらったお金で高校に入ると同時にバイトを始め、ちょっとづつ貯金を増やそうとはしているが、もうお母さんの貯金は底が見え始めている。
どうしようかと考えながら、私は静かに通帳をもとあった場所に戻した

夢を見た。
私は学校にいて、教室にいる。
座っているのか立っているのか、寝転がっているのか。
自分がどういう状況か分からないのに、妙にリアルで、なんだか懐かしい。
すると突然、後ろのドアが開いた。
驚いてドアのほうを見る。
けれどおかしいな。誰も入ってこない。
「誰かいるの？」
心の中で思ったことが声になって教室に響いた。
なのに、なにも返事が来ない。
「ねえ、誰かいるんでしょ？」