先輩と甘い初恋はじめました。

「いえいえ。こちらこそありがとう。助かったわ」



ゆっくりと立ち上がって袋に野菜や果物を入れるとその場から立ち去って行った。


それを俺と琥珀は見送ってから、また学校に向かって歩き出す。



「…………琥珀は用意がいいな。相変わらず」


「え?普通じゃないですか?」



手に持っていたアメを大事そうにカバンに入れると、首を傾げた。



「でも、俺はビニール袋なんて持ってないよ。………一年前もこんなことあったなぁ………」



俺はわざとらしく一年前、という言葉を使ってみた。これを言ったら琥珀は思い出してくれるかも。そんな、淡い期待を抱きながら。



「一年……………って、もしかして………私が受験生の時のことですか?」



何かを思い出したのか、あごに手を当て、深く考え込む。


…………これは、思い出してくれるのか?


ドキドキしながら琥珀の次の言葉を待った。
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