先輩と甘い初恋はじめました。
「いえ。気をつけてくださいね!」
おばあさんににっこり笑って挨拶をしていた。
ードキッ。
また、だ。あの子の笑顔を見ると心臓が跳ね上がる。
いつの間にか見入っていて、気づいたらその子を追っていた。
「ねぇ、キミ!」
「きゃっ!だ、誰ですか!?」
パシッと腕を掴み、その子を見た。
あれ、年下かな。パッと見俺よりは幼く見えた。だけどぱっちりとした目、サラサラな長い黒髪。俺は一瞬で目を奪われた。
もうほとんど一目惚れだったと思う。
恋に興味を無くした俺に、こんな感情が湧き上がるなんて。
「キミ、名前は?」
「へっ?名前、ですか?」
俺を見て目をぱちぱちと瞬きをする。
普通そうなるよな。見ず知らずの人にいきなり名前を聞かれたら誰だってそうなるよな。
でも俺は諦めずにじっと目を見つめる。
トクン、トクン………。まるで時が止まったかのように静まり返る。