よあけまえのキミへ

「もう一つ聞きたいことがあったんです。えっと、このほとがらに見覚えありませんか……?」

 お兄さんの商売っ気がいくらか抜けて雑談できそうな余裕を感じとった私は、昨日拾ったほとがらを懐から取りだして、彼に見せる。

「どれどれ……? おおっ、こいつは!」

 のぞき込むなり、お兄さんは目を見開いて声を上げる。
 ――この反応は、間違いなく事情を知っている!

「ご存知ですか!? もしかして、ここで撮られたものでしょうか?」

「そうだよ! 確かにうちで撮った。よーく覚えてるよ、面白い三人組だったからねぇ……しかもつい最近のことさ。ほんの三、四日前」

「ええっ!? そんなに最近のものなんですか!?」

 返答を受けて、目を丸くしながら思わずほとがらを二度見する。
 三、四日前ということは、撮ってすぐに落としたことになる。

「そーなんだけど、何でキミがこれを? もしかして三人の関係者? そうは見えないけどねぇ……」

 お兄さんは、腕を組んで少し難しい顔をしながら私の顔をしげしげと見つめる。

「いえ、昨日拾ったんです。落とした人は困ってるだろうなぁと思って手がかりを探しているんですが……三人はどこに住んでるか分かりますか?」

「拾いものかぁ……うーん、お客さんの情報は些細なことでも漏らせないからねぇ」

「そう……ですか。でも、ここで撮ったものだと分かっただけでも収穫です、ありがとうございます!」

 最近ここで撮ったということは、まだ近くにいるはずだ。
 探していれば近いうちに会えるような気がしてくる。

「ああ、そうだ。もし本人達がまた訪ねて来たらキミが写真を持ってるって伝えとくからさぁ、どこの子か教えてもらえる?」

「あ、はいっ! 木屋町にあるいずみ屋の、天野美湖(あまのみこ)ですっ!」

「ほほう、いずみ屋さんかぁ、聞いたことあるな。まぁ、何か手がかりがつかめたらこっちから出向くよ。早く本人に返せたらいいねぇ」

 親切な対応に、私は深々と頭を下げてお礼を言う。

 ほとがらの話もいろいろと聞けたし、来てみて本当に良かった!

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