よあけまえのキミへ
「変わっているな、お前は」
勝手口の戸に背をあずけるようにして腕組みをすると、中岡さんはフンと小さく笑みをもらしながら私のほうに視線を向ける。
「どういうことですか……?」
「会ったばかりだと言うのに、やけにこちらを気にかけてくれると思ってな。普通なら、厄介ごとを抱えていそうな輩とは関わり合いになりたくないと思うはずだ」
「それは、中岡さんだからです! あ、もちろん田中さんや橋本さんも、同じように逃げていたら助けますよ!」
胸を張って言う。
写真を見つけた瞬間から、興味を持っていた……会いたいと思っていた。
「つまり、写真を見て俺たちを探していたからというわけか……? 実際はどんな人間かもよく分からんというのに」
「そうです。でも、写真の落とし主さんを探していたからというより、もっと単純に、会いたかったんです。写真の中の人に! 本当にいるんだって確認したかった!」
「好奇心旺盛なのは結構だが、危ない橋を渡っていることに気付いているか? そうやって迂闊に接触して、もしこの俺が、極悪人だったとしたらどうする――?」
私の言葉に釘を刺すように中岡さんの重い声が静まり返った空間に響く。
「極悪人は、こんなふうに優しい顔で笑ったりしません。中岡さんは、きっといいひとです」
懐から写真を取り出して、紙の中で微笑む中岡さんに柔らかく笑顔を返す。
そうしてそのまま顔を上げて、目の前に立つ中岡さんへと視線を向けた。
中岡さんは、目を丸くしてきょとんとした表情を浮かべている。
「……お前、何を言って……」
「この写真の顔、すっごくいい笑顔だと思います!」
「……はぁ、もういい。この話は止そう。お前が本当に変わった娘だということは分かった」
中岡さんは、呆れたようにため息をつきながら、手のひらをこちらに突き出して無理矢理に私の言葉をさえぎった。
「笑顔だけじゃなくて、今日話した田中さんは気さくで明るい人でしたし、中岡さんだって話していて悪い人のようには見えないし……それで、やっぱり三人ともいい人なんだろうなって」
「……そうか。しかし、あまりそうやってよく知りもしない相手を信頼しない方がいい。そして一つ言っておくが、その写真を人に見せたり、俺たちとこうして接触したことを他言したりは出来る限りしないでほしい」
「はい。もちろん、人にペラペラ喋ったりはしません!」
今夜の様子を見ても、なんだかわけありな感じだから、余計な詮索はしないでおこう。
かすみさんにだけは写真のこと相談しちゃったけど、あれくらいならいいよね……。
「……危なっかしいところはあるが、お前は意外と信頼できそうだな」
「意外なんて言い方しないでくださいよ……! 私は中岡さんたちの味方ですからね! 何でも言ってください!」
表情をくずして小さく笑う中岡さんを見て嬉しくなった私は、ぐっと両拳を握り、熱いまなざしで身を乗り出す。
「ついさっき話した、すべて他言無用の約束を守りきれるのであれば、頼みたいことがある」
「何ですか!? 誰にも話しませんから言ってください!」
「まず、紙と筆を用意してほしいんだが……」
「はいっ!!」