よあけまえのキミへ

 いずみ屋前までたどり着くと、先ほど陸奥さんと目撃したダンダラ羽織をまとった集団が、店のまわりを囲んでいる。

 ものものしい雰囲気だ。
 見慣れた小路からは、人の流れがぷつりと途絶えている。
 私が店を出た時にはかたく閉じられていた表の木戸は、一部が破壊され、強引にこじあけたように斜めにゆがんでいる。


(どうしてこんなことに……)

 あまりの状況にがくぜんとしながらも、折れそうな膝に力を入れて戸口へと足をふみ出した。


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