よあけまえのキミへ

「――少しは落ち着いてくれたかな?」

「はい」

「そっか、よかった。それじゃあ最後にもう一つ」

「なんでしょう?」

 私はぐすぐすと鼻をすすりながら首をかしげる。
 思えば長岡さんとは初対面なのに、なんだかたくさん悩みを聞いてもらって少し申し訳なかったな……。

「三人から文を預かってるんだ」

「ええっ!? そんな大事なこと、はやく教えてくださいよ!!」

 とにかく早く見せてほしいと、長岡さんに詰め寄る。
 彼は苦笑して懐からそれを取りだし、こちらに手渡した。

 文は全部で三枚。
 それぞれ字の大きさと筆跡が違うから、一人一枚ずつ書いてくれたのだと分かる。

 さっそく読もうとして、はたと動きをとめた。

「あの……長岡さん」

「ん? なに? 読んでみなよ」

「いえ、その……難しい字がいっぱいで読めません……」

「え、そう? あー、中岡さんの文ねぇ……ちょっと女の子向けじゃないもんね。よかったら読み上げようか?」

「お願いします、できれば三枚とも……」

「了解。おまかせあれ」

 長岡さんは、人差し指と親指でマル印をつくって、にっこりと笑ってくれる。

「まず中岡さんのからいくね」

「はいっ」

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