よあけまえのキミへ

『天野
 傍にいながらお前を守れなかった事
 言葉に尽くせぬほど後悔している
 本当に済まなかった
 俺達がもっと水瀬らの動きに注意を払っていれば
 いずみ屋にまで被害が及ぶ事はなかっただろう

 この件の責任は俺たちにある
 決して自分を責めるな
 水瀬らとの決着は必ずつけるつもりだ
 いずみ屋女将の行方も追う
 彼女は必ずお前のもとに帰すから心配せずに待っていてくれ

 最後に
 浪士との付き合いを続けるのはお前にとって良くない事かもしれん
 以後こちらからの連絡は控える
 もし何かあれば長岡くんを通して文をくれ

 中岡』


「中岡さんらしい、お堅い文面だね……次、ハシさんのいくよ」

 胸がいっぱいになって言葉につまる私にそっと目配せをして、長岡さんは紙のたばをめくる。


『天野さん
 怪我の具合はいかがですか
 しばらくは無理をなさらずどうか安静にお過ごしください

 このような事態になり責任を痛感しております
 何一つお力になれなかったことを恥じるばかりです

 浪士を店に受け入れたこと
 後悔していらっしゃると思います
 ですが私は
 あの店のあたたかさに幾度となく心癒され救われました
 そのような浪士はきっと他にもいるはずです

 いずみ屋を非難する方は今後大勢目につくでしょう
 ですが私はいつまでもあなた方の味方です

 かすみさんは必ず探しだしますのでどうか待っていてください

 大橋』


「ふぅん、ハシさんはいずみ屋に通ってたんだねぇ……それじゃ最後、ケンくんいくよ」


『必ずカタキは討つ
 泣かずに待ってろ

 田中』

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