よあけまえのキミへ
「ふぅ……」
はりつめていた糸が切れたように大きく息をつき、私は蔵の壁に背をあずけて、ずるずるとその場に沈んだ。
――まさか、本当に会えちゃうなんて。
一人になって一息ついた今、なぜだか私は笑っていた。
きつい話も聞いたけど、おかげでゆるみそうだった気持ちが引き締まった。
頭の中のモヤが晴れた気分だ。
危険をおかしてまで、わざわざ私に会いにきてくれた二人に感謝しなきゃ。
大橋さんも、かすみさんを探し回ってくれている。
坂本さんも、私のことを心配してくれている。
すごく、嬉しかった。
あの人たちとまた笑って会えるように、失ったものを取り返さなきゃいけない。
そのために、自分にできることを探すんだ。
少しだけ熱の残る真っ暗な蔵の裏手で、私は一人ぎゅっと拳をにぎりしめた。
「さっきは何話してたーん? 長かったなぁ、二人から迫られてたん?」
「何言ってるの、ゆきちゃん! 寝ぼけすぎだよ! さぁ、お布団入ろうね」
あのあと私は、庭木の茂みに突っ伏して爆睡するゆきちゃんを発見し、よろよろと支えながら離れの自室に戻ってきた。
もう、くたくただ。
「みこちん、二人に会えてよかったなぁ~」
「うん! ゆきちゃんが協力してくれたおかげだよ、本当にありがとね」
「くか――……」
またしても寝落ち!
わざわざ一人、離れたところで待ってくれていたんだから、眠くなるのも当たり前か。
気持ちよさそうに寝息を立てるゆきちゃんに向かって、もう一度心の中でありがとうとつぶやく。
なんだか、ほっとする寝顔だな。
冷えないようにちゃんと布団をかけてあげなきゃ。