君と恋をするための三か条
「…朝か。 いてっ…寝違えた…」

七瀬新はもそもそと頭を起こし、首を抑えて項垂れる。
そして顔を上げ、私と目が合うと一瞬動きを止め、それからへらっと笑った。

「起きてたのか。おはよう」

「あ…はい、おはようございます………っじゃなくて! あの、ここは…ええと、何故シェフが…一緒に…」

「落ち着け。ここは俺の部屋。酔って倒れた君を運んだの。誓って変なことはしてません」

そうなのか…私、倒れて……。
ああ、だんだん思い出してきた。
しつこい男の人に困っていたら、彼が助けてくれたんだ。

「すみません。ご迷惑おかけしました。 食事も途中でしたよね。ごめんなさい」

「いいよ。君を酔わせたのは店の責任でもあるし」

そんなことない。私の自己管理不足が招いたことだ。

「そうだ、お金も払ってない」

「それもいい。あんなことになったお詫び。 君、ほんとにお嬢様? 偏見だけど、お嬢様ってもっとガメツイイメージ…」

「…それはずいぶんな偏見ね。あなた今、全お嬢様を敵に回しましたよ」

「うお、それはなかなかヤバそうだな」

いや…まって……

「なんで、私のこと知って…?」

七瀬さんは眉根を寄せて訝しげな顔をする。

「昨日散々自分で喋ってたぞ。覚えてないのか?」

「全く……。 私、他になにか言いましたかね…?」
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