君と恋をするための三か条
ほとんどの人は私が社長の娘だと知っているけれど、私を一社員として見てくれる職場は有難いと思う。

今日は、副社長の奥様の誕生日ということで副社長は一日休みを取っているので、自ずと私たち秘書もお休みを頂いた。

だから、金曜の夜から作戦決行していたのだ。

「はい、出来たよ。簡単なもので悪いけど」

目の前にお皿がことりと置かれてはっとする。

「すごい…ふわふわ…とろとろ。 ほんとにプロなのね…」

「オムレツひとつで大袈裟だな」

七瀬さんがふっと笑う。

「そういえば、七瀬さん、今日はお店は?」

「ランチからスタートだから余裕ある」

ふたりでいただきますと手を合わせ、卵にスプーンを入れると案の定、細かく刻まれた野菜ととろとろの卵が飛び出てくる。

サラダにパン、スープもついて、なんて贅沢な朝食…。
朝は家政婦さんを雇わないから、こんなに豪華な朝ごはんは初めてかもしれない。
…ううん。母がいたころは、食べていたかも。

食事を終えると、せめて食器洗いはとやらせてもらった。
至れり尽くせりじゃあ落ち着かないもの。
掃除も洗濯も食事も、身の回りの事はだいたい家政婦さんがやってくれるけれど、個人契約で専属でついてもらっているため、彼女たちの都合で来られない日もある。

そういうときは当然自分たちでやることはやるので、何も出来ないってわけではない。
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