君と恋をするための三か条
付き合ってくれ、なんてしきりに言われた時は驚き、なんだこいつ、と若干引いた。
そんな女のとろんとした瞳と暖かい手、さらには『行かないで、そばにいて』なんて懇願されただけで俺の中の何かがキレそうになったなんて、情けない。
彼女のことは度々店で見かけることがあった。たぶん、父親に連れてこられていたのだろう。
それがあの日はひとりだった。
しかもなんか変な男に絡まれてるし。
俺はほっとくわけにもいかず、コック帽を脱いで店に出た。
首をぶんぶん振ってこちらを見つめて、『助けて』と訴えてくる。
近くで顔を見たのは初めてだった。
これを言ったら怒られそうだけれど、意外と綺麗な顔をしているじゃないかと思った。
東雲麗花は気が強い。
俺が敢えて歯に衣着せぬ物言いをすれば、『失礼な人』というようにぱっと態度を変えた。