君と恋をするための三か条
「うそ…なんてタイミングで…」

呆気に取られている間にも、麗花の服が水を吸って肌に密着しだす。

「とりあえず、中入ろう」

俺は自分が来ていたジャケットを脱ぎ、麗花の肩にかけながら促す。

「新の…」

「俺はいいから。…その胸元、全力で隠して」

麗花が自分の服が濡れて透けているのに気づき、さっとジャケットを握りしめる。
こんなもの、誰かに見られたらたまらない。
俺はなるべく麗花のほうを見ないようにしながら、館内へと急いだ。


「新、寒くない? ごめんなさい」

館内は、同じように雨から逃れてきた人でごった返していた。
端に身を寄せ、麗花が持っていたハンカチで俺の顔や腕の水分を取り払ってくれる。

しかし、人の心配をしながら麗花の唇は紫色で、寒そうに肩を竦めている。
くしゃみまでしだしたので、俺は麗花の手をハンカチごと彼女の方にやり、にかっと笑って見せた。

「大丈夫。俺、生まれてこの方風邪ひいたことないから」

そんな見え透いた嘘をつくと、麗花は不服そうな顔をする。
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