君と恋をするための三か条
「残念だけど、帰ろうか。思ったより濡れてるし、近いから俺のマンション寄って着替えよう。温かいものも作る」

「新の…部屋…?」

「…誓って何もしないよ?」

「あ、いや、そ、そうよね…!分かってるわ」

何だこの反応…。安心しきられても困るんだけどなあ。
何やら俯いてぶつぶつ言う麗花の手を引き、人の間を縫って出入口まで歩く。

「こうも急に激しく降られると、レインコートも意味なかったなあ」

「そ、そうね。せっかく持ってきてくれたのに」

歯切れの悪い麗花に首をかしげ、その原因に気づき、俺はにやりと悪い笑みを浮かべる。
繋いでいた手をぎゅっと強く握り直すと、案の定、麗花はびくんと全身をふるわせて弾かれるように顔を上げた。

口をパクパクさせる麗花とそのまま退場ゲートまでくると、この豪雨でビニール傘が普段より安く売られていて、俺は迷わず一本買った。

「車までだし、一本でいいよね?」

一応断ると、麗花は小さく頷く。
ほんとは嫌なんだろうな、とは思いながらも、安く済ませられるし、風も強いから安全面も、と何かにかこつけて処理した。
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