君と恋をするための三か条


「新、私にも食器洗いくらいはさせて」

麗花の緊張を解くためにも、夕食作りまで各々静かに過ごした。
部屋に慣れたのか、表情も穏やかになった麗花がちょこんと隣にやってきて、言った。

「じゃあ頼むよ」

たぶん麗花は、料理を仕事とする俺に気遣って、その工程には手を出さないつもりなのだろう。
いつもは手が空いた隙に溜まった洗い物を始末するけれど、進んでやってくれる人がいるのはだいぶ楽だ。

何もするなと言っても麗花は落ち着いていられないだろうし、ありがたくお願いすることにした。

手際よく食器を洗い終え、タオルで手を拭く麗花に声をかける。

「悪い、そこの鍋に塩ひとつまみ振ってくれる?」

「ひ、ひとつまみ…?」

麗花は何故かぎくっと体を硬直させ、恐る恐ると言った感じで塩の入った容器を抱える。
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