君と恋をするための三か条
「講師が男だったらどうする? 指導の度に君と距離が近くなると思うと、仕事が手につかなくなりそうだ」

「な、何言って…!新が心配することじゃないわよ」

「俺は仮にも麗花の婚約者だ。俺以外の男が麗花とゼロ距離になるなんて嫌だ。…俺もまだなのに。 とにかく却下」

仮にも、なんて付け加えたのは、麗花に変に気取られないためだ。
今俺の気持ちを知られては、麗花は俺から逃げ出すかもしれない。
まあ、万が一そうなっても、簡単には逃がしてやらないけど。

「それに、わざわざ金を払って通わなくても、ここにいるだろ、一流シェフが」

「で、でも、新も忙しいんだし、やっぱり大丈夫…」

渋る麗花に追い打ちをかける。

「ダメだ。麗花には教えがいがありそうだし、息抜き程度になるだろう。俺に任せろ。手取り足取り教えてやる」

麗花は困惑しきった微妙な表情をしていた。
そんなに嫌かよ。
いや、違うのか。

彼女は全てにおいて慣れていないのだ。

男と距離を縮めるのも、男の部屋に来るのも、男に口説かれるのも。料理にも。

だったらその初めては、全部俺がもらう。


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