君と恋をするための三か条
「食事中なので話しかけないでもらえませんか」

「えー、いいじゃん。せっかくの出会いに乾杯しようよ」

出会い…?出会いなの、これは。
そっちが勝手に近づいてきただけだと思うのだけど…。

席を移動させてもらおうかと考えていると、腰の辺りに違和感を感じた。
すぐにそれが男の手だと分かり、全身に悪寒が走る。

「触らないでください」

気持ち悪い。
食事の邪魔をされるのも不愉快なのに、こんなに下品な真似をするなんて!

「ねえ、この後暇? 空いてる?」

言いながら、男の顔が近づき鼻息が耳にかかる。

「…っ、やめ、て、って言ってるの」

吐き気がする。せっかくの美味しい料理が台無しだ。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの。
私の結婚阻止大作戦に誰かを巻き込もうとお店に来たバツ!?

ごめんなさい、もうしないから。
そんな邪な気持ちでお店に来たりしないから…!
誰か、助けて――

「失礼ですが」

背後から聞こえてきた声に、男も私も振り向く。
そこには、スラリと足が長くそれでいて体格はしっかりしていて逞しい出で立ちの男性が立っていた。

「そちらの女性は嫌がっているように見えるのですが、大丈夫ですか?」

「やだなあ、店員さん? 言いがかりはやめてくれよ」
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