君と恋をするための三か条

新とその恋人らしい女性をホテルで目撃してから三日が経った。
その日は新と料理の練習をすると約束していた日だった。
けれど、私はキャンセルの連絡をした。

理由は分からない。
ただ、今はどうしても新に会いたくなかった。
どんな顔をすればいいのか分からなかった。

それと、私には考えなければならないことがある。

このまま彼と契約を続けていいのかどうか。

ダメに決まってる。

お互い決まった相手がいなかったから成り立った話だ。
私はありえないけれど、新に恋人ができるかもしれないなんて考えていなかった。

新はどうするつもりだろう。
向こうから契約結婚の破談を申し出てくるかもしれない。

しかし、私が提示した条件の手前、言い出せない可能性もある。

それなら、私が身を引くべきではなかろうか。
きっとそれがいちばんいい。

はやく、早く新を解放してあげなきゃ。
父にはなんとだって言える。

愛し合っていた者の心変わりなんて、珍しいことではないのだから。
それは父だってよく分かっているはずだもの。
浮気して出ていった母のことを思い出し、ますます気分が落ち込む。
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