君と恋をするための三か条

朝早く会場入りし、入念に準備を重ねてきた式が間近に迫るとさすがに緊張してくる。
ファーストミートを経て私の隣にいる新の容赦ない視線も恥ずかしい。

「可愛い。もう脱がせたい」

「ばか、早いわよ」

「そうだね。夜のお楽しみにしておく」

ほんとに、この人は…!

私、絶対顔赤い。
新がふっと笑い、私の唇にそっとキスを落とす。

「だから、フライングだって…」

なりふりかまわない新を睨んでおいた。彼はあっけらかんとしてにっと笑う。

「そうだ。今日のうちに、誰にもバレずに何回キスできるかな?」

妙なことを言い出した新に、私は顔をしかめてみせる。

「ばかなことは…やめてよ」

「目標三十回!」

「そんなにしなくていいから!」

呆れてため息が出る。結婚式なんだから、誓のキスだけで十分よ。

項垂れる私に対して、新は無邪気な笑顔だ。楽しそうなんだから…。

そこでノックがなる。
入ってきたスタッフが、式の開始を告げた。

「あ〜、俺の奥さん世界一可愛い」

「うるさいなあ、もう。分かったってば。ありがとう」

軽口を叩きながら、新との出会いに、改めて感謝する。
こんなに私を愛してくれる旦那さんがいて、私は世界一の幸せ者ですよ。
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