君と恋をするための三か条
私の父に結婚の挨拶に行った時の、新の言葉を思い出す。


『僕では麗花さんに相応しくないと思われるかもしれません。ですが、麗花さんとずっと一緒にいたいと思っています。麗花さんのことを、僕が人生をかけて幸せにします』

企業の社長相手に緊張しただろうに、新は誠心誠意を込めた言葉で頭を下げた。

『お父さんに反対されても、この人と結婚する意思は変わらないわよ』

『麗花! なんで君はそう挑発的な…』

せっかく俺頑張ってるのに、と新が小声で私を窘める。

援護射撃したつもりだったんだけど…必要なかったみたい?

するとそれまで黙って話を聞いていた父が口を開いた。

『麗花』

『はい』

父に名前を呼ばれると、緊張して背筋が伸びる。
もともと仏頂面の父の低い声は、心臓に振動が伝わるようだから。父に挑発的な態度を取ってしまうのは、その声に負けじと心が身構えるからかもしれない。
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