君と恋をするための三か条
二次会で結構飲まされた新の酔いを冷ますために、ふたりで夜のホテル街を歩く。
「新、大丈夫? ごめんね、うちのお父さんが」
「大丈夫。これくらいでへたってられん。 明日からハネムーンだからな!」
お酒が入っているからか、いつもよりテンション高めでご機嫌な新にくすっと笑みがこぼれる。
私は数瞬迷って、口を開いた。
「あのね、新。実はこの間、母親に会ってきたの」
「そうか」
新の声のトーンが下がった。けれど、思いのほか驚かないんだな。
「父が連絡してくれたみたいで、向こうから会いたいって。 どの面下げてって怒れたんだけど、なんかあの人も、当たり前だけど、歳とったのよねえ。電話の声も、私が覚えていたはずのものとは違った」
新は静かに、私のペースに合わせて歩くだけだ。黙って聞いてくれるので、私もやめない。
「私、出ていった母のことを少なからず恨んでたし、嫌いだと思ってた。 …でも、母親って世界に一人だけなのよね。私の母親はあの人だけなんだなあって思えてきちゃって。 実際会ってみたらびっくり」