君と恋をするための三か条
男の喚き声に、店内がざわざわしだす。
全て視線はこちらに向けられているのに、男は顔を真っ赤にしてふんぞり返るばかり。

そんな男にも毅然とした態度を取り続ける背の高い彼は、表情を変えずに、穏やかな口調で言った。

「責任者ならここにいますよ。私がCocoのシェフをしております、七瀬新(ななせ あらた)です」

「なな、せ…」

店内の空気が一瞬にして変わる。
しんと静まり返り、男も徐々に焦りを顕にしだした。
やがて椅子から立ち上がると、逃げるように店から出ていった。

あちこちで、「あの人が…」とか、「シェフ、ほんとに若かったのね」とか、シェフの登場に驚きを示す。

私は呆然と立ち尽くし、彼を見上げて呟く。

「シェフ…」

この人が……

「お客様、大丈夫ですか?ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ありません」

七瀬新は私にそう言うと、レストラン全体にも謝罪を伝えた。
お客さんのまばらな拍手のあと、元のように食事を再開する。
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