流れのままに恋したい ~ 過去に傷ついたふたりの恋物語 ~
副社長とのランチを終え、オフィスに戻る前に
ビルの地下街あるカフェに向かった。
ふと見ると、レジの前に彼女も並んでいる。
そういえば昼休みの後は、いつもコーヒーを飲んでいたな・・・。
俺もレジに並ぼうとしたところで、ポケットのスマホが震えているのに気付く。
画面に出ているのは、副社長の新しい秘書の名前だ。
「はい、上野です」
「上野部長、申し訳ございません!! 急ぎのお願いが!!」
焦りの声が聞こえる。
「何でしょうか?」
「実は13時からの会議資料を、私がひとつ失念しておりまして。副社長に伺ったところ、上野部長に対処していただくようご指示がありまして」
マジか・・・。
「もう少し、詳細伺えますか? いま外なので、電話で申し訳ないですが」
「ありがとうございます」
「あ、ちょっとだけ待ってもらえますか?」
俺は、少し前にいた彼女に声を掛けた。
「澤田さん、ごめん!」
「はい?」
「おんなじの。俺の分もお願い!」
「え? 部長、おんなじって・・・」
「頼むね!」
彼女は目をパチパチさせながら俺の方を見ていたが、俺は秘書との会話を再開し、そのままカフェを出た。
俺は、彼女が普段何を飲んでいるか知っていた。
ミーティングの時に持ち歩いているのを見て、そのカップに『A』と書かれていたから。
ブラックかそうじゃないかは、後で分かる。
カップだけ持っていればブラック、そうじゃなければ、ミルクや砂糖を別で持って来るだろうから。
副社長の書類を急いで用意し、秘書に説明するために階上に向かおうとフロアのドアを開けた。
彼女が両手にカップを持ちながら、ちょうどこちらに戻ってくるのが見えた。
ということは、ブラックか・・・。
「ありがとう、もらうね」
彼女の手から、ひとつカップを受け取った。
「中身、確かめなくていいんですか?」
彼女にそう聞かれ、俺はサラリと答える。
「中身? アメリカンのブラックだろ?」
「どうして分かるんですか?」
「どうしてって・・・どうしてだと思う?」
真面目な彼女に、軽い返しは期待していないが、俺が普段の彼女をちゃんと見ているのだということは伝えたかった。
「・・・もういいです。失礼します」
彼女の答えに、おれの思惑は伝わらなかったかと思いつつ、副社長室に向かった。
夕方、会議を終えてデスクに戻ると、珍しく彼女が遅くまで残っていた。
彼女のスケジュールを見ると、どうやら遅い時間帯にミーティングが入ったようで、終わった後の整理でもしているんだろうか。
昼に、変な感じで会話が終わったことを思い出し、俺は地下のカフェに向かった。
コーヒーをふたつと、スコーンをひとつ買った。
彼女は、スコーンが好きだと早川さんに話していたことがある。
「はい、お昼のお返し」
彼女のデスクにコーヒーのカップを置いた。
「え?」
「それと、こっちはスコーン」
「あ、あの・・・部長、これ・・・」
「残業禁止な、早く帰れよ」
それだけ言って、俺は彼女の席を離れた。
ビルの地下街あるカフェに向かった。
ふと見ると、レジの前に彼女も並んでいる。
そういえば昼休みの後は、いつもコーヒーを飲んでいたな・・・。
俺もレジに並ぼうとしたところで、ポケットのスマホが震えているのに気付く。
画面に出ているのは、副社長の新しい秘書の名前だ。
「はい、上野です」
「上野部長、申し訳ございません!! 急ぎのお願いが!!」
焦りの声が聞こえる。
「何でしょうか?」
「実は13時からの会議資料を、私がひとつ失念しておりまして。副社長に伺ったところ、上野部長に対処していただくようご指示がありまして」
マジか・・・。
「もう少し、詳細伺えますか? いま外なので、電話で申し訳ないですが」
「ありがとうございます」
「あ、ちょっとだけ待ってもらえますか?」
俺は、少し前にいた彼女に声を掛けた。
「澤田さん、ごめん!」
「はい?」
「おんなじの。俺の分もお願い!」
「え? 部長、おんなじって・・・」
「頼むね!」
彼女は目をパチパチさせながら俺の方を見ていたが、俺は秘書との会話を再開し、そのままカフェを出た。
俺は、彼女が普段何を飲んでいるか知っていた。
ミーティングの時に持ち歩いているのを見て、そのカップに『A』と書かれていたから。
ブラックかそうじゃないかは、後で分かる。
カップだけ持っていればブラック、そうじゃなければ、ミルクや砂糖を別で持って来るだろうから。
副社長の書類を急いで用意し、秘書に説明するために階上に向かおうとフロアのドアを開けた。
彼女が両手にカップを持ちながら、ちょうどこちらに戻ってくるのが見えた。
ということは、ブラックか・・・。
「ありがとう、もらうね」
彼女の手から、ひとつカップを受け取った。
「中身、確かめなくていいんですか?」
彼女にそう聞かれ、俺はサラリと答える。
「中身? アメリカンのブラックだろ?」
「どうして分かるんですか?」
「どうしてって・・・どうしてだと思う?」
真面目な彼女に、軽い返しは期待していないが、俺が普段の彼女をちゃんと見ているのだということは伝えたかった。
「・・・もういいです。失礼します」
彼女の答えに、おれの思惑は伝わらなかったかと思いつつ、副社長室に向かった。
夕方、会議を終えてデスクに戻ると、珍しく彼女が遅くまで残っていた。
彼女のスケジュールを見ると、どうやら遅い時間帯にミーティングが入ったようで、終わった後の整理でもしているんだろうか。
昼に、変な感じで会話が終わったことを思い出し、俺は地下のカフェに向かった。
コーヒーをふたつと、スコーンをひとつ買った。
彼女は、スコーンが好きだと早川さんに話していたことがある。
「はい、お昼のお返し」
彼女のデスクにコーヒーのカップを置いた。
「え?」
「それと、こっちはスコーン」
「あ、あの・・・部長、これ・・・」
「残業禁止な、早く帰れよ」
それだけ言って、俺は彼女の席を離れた。