流れのままに恋したい ~ 過去に傷ついたふたりの恋物語 ~
第4章 ふたりの物語
目を開けると、カーテンの隙間から明け方の空が見えた。
私の横には、穏やかな寝息の彼がいる。
『何度目が覚めても、俺はここにいる。莉夏が、それを自分で確かめたらいいんだ』
その言葉通り、いつ目が覚めても彼がいた。
横で寝ていることもあれば、スタンドの灯りで本を読んでいることもあった。
「莉夏、どうした?」
気付いた時には、いつもそう言って私の頬をなでてくれる。
ふと、疑問がわいた。
こんなに優しい人なのに、なぜ彼は、今までひとりだったんだろう。
早川さんだけじゃない。
彼の近くにいて、彼をいいなと思う女性は他にもいたはずだ。
身長は180センチに少し足りないくらいで。
短髪よりは長めの、サラッとした髪。
夜、帰りがすごく遅い日以外は走っている。
だから、身体つきも整っていてスーツが似合う。
もちろん、仕事だってできるし・・・。
ある時、私は思い切って尋ねてみた。
「ね、航平」
「ん?」
「航平って、今まで結婚考えた人いなかったの?」
ほんの少し黙った後に、答えてくれた。
「・・・いたよ」
「え?」
「いた」
「そう・・・なんだ」
「聞きたい? 面白い話じゃないけど」
聞きたい。でも、聞きたいなんて言えない。
答えに困り、私はうつむいた。
「大切にしてたつもりだったんだけどね・・・退屈だったみたいで」
彼は寂しそうに笑った。
「他に男がいることに気付かなくて、そいつと結婚するって、もうお腹に子供もいる・・・って」
そんな・・・。
「自分を見失ったし、どんなに時間が経っても、自信を取り戻すことが・・・」
私は彼の唇を塞いだ。
「んん・・莉・・夏」
「ごめんなさい」
唇を離し、彼に謝った。
「言いたくなかったよね・・・ごめんなさい」
彼は、私の頭をポンポンとなでて話を続けた。
「そんな自信のない俺の前に、莉夏が現れたんだよ。それも、今すぐ助けないと死ぬかもしれない・・・っていう、究極のシチュエーションでさ」
「うん・・・」
「あの時から、ゆっくりと違う回転が始まったんだ」
「違う、回転?」
「そう。莉夏を想っていたら、名前を呼びたいとか、触れたいとか、近くにいる男の存在が疎ましいとか。持つべきじゃないって封じ込めてた感情が、勝手に浮き上がってた」
「それで?」
「今度ダメなら、ベトナムに永久に飛ばしてもらえばいいや・・・って、もう流れに任せることにした」
彼はそう言って笑うと、私の顎をすくい上げた。
「でも本当は、自信なんていらなかったんだ。名前を呼んで、触れて、不安も一緒に抱える。ただそれだけで良かったんだなぁって、思ってる」
「航平・・・」
「なんか、いいオトナなのに何言ってんだよって感じだろうけど、もう、ごまかすのも取り繕うのも嫌なんだ」
彼は微笑んで、私にやわらかい唇を落とした。
私の横には、穏やかな寝息の彼がいる。
『何度目が覚めても、俺はここにいる。莉夏が、それを自分で確かめたらいいんだ』
その言葉通り、いつ目が覚めても彼がいた。
横で寝ていることもあれば、スタンドの灯りで本を読んでいることもあった。
「莉夏、どうした?」
気付いた時には、いつもそう言って私の頬をなでてくれる。
ふと、疑問がわいた。
こんなに優しい人なのに、なぜ彼は、今までひとりだったんだろう。
早川さんだけじゃない。
彼の近くにいて、彼をいいなと思う女性は他にもいたはずだ。
身長は180センチに少し足りないくらいで。
短髪よりは長めの、サラッとした髪。
夜、帰りがすごく遅い日以外は走っている。
だから、身体つきも整っていてスーツが似合う。
もちろん、仕事だってできるし・・・。
ある時、私は思い切って尋ねてみた。
「ね、航平」
「ん?」
「航平って、今まで結婚考えた人いなかったの?」
ほんの少し黙った後に、答えてくれた。
「・・・いたよ」
「え?」
「いた」
「そう・・・なんだ」
「聞きたい? 面白い話じゃないけど」
聞きたい。でも、聞きたいなんて言えない。
答えに困り、私はうつむいた。
「大切にしてたつもりだったんだけどね・・・退屈だったみたいで」
彼は寂しそうに笑った。
「他に男がいることに気付かなくて、そいつと結婚するって、もうお腹に子供もいる・・・って」
そんな・・・。
「自分を見失ったし、どんなに時間が経っても、自信を取り戻すことが・・・」
私は彼の唇を塞いだ。
「んん・・莉・・夏」
「ごめんなさい」
唇を離し、彼に謝った。
「言いたくなかったよね・・・ごめんなさい」
彼は、私の頭をポンポンとなでて話を続けた。
「そんな自信のない俺の前に、莉夏が現れたんだよ。それも、今すぐ助けないと死ぬかもしれない・・・っていう、究極のシチュエーションでさ」
「うん・・・」
「あの時から、ゆっくりと違う回転が始まったんだ」
「違う、回転?」
「そう。莉夏を想っていたら、名前を呼びたいとか、触れたいとか、近くにいる男の存在が疎ましいとか。持つべきじゃないって封じ込めてた感情が、勝手に浮き上がってた」
「それで?」
「今度ダメなら、ベトナムに永久に飛ばしてもらえばいいや・・・って、もう流れに任せることにした」
彼はそう言って笑うと、私の顎をすくい上げた。
「でも本当は、自信なんていらなかったんだ。名前を呼んで、触れて、不安も一緒に抱える。ただそれだけで良かったんだなぁって、思ってる」
「航平・・・」
「なんか、いいオトナなのに何言ってんだよって感じだろうけど、もう、ごまかすのも取り繕うのも嫌なんだ」
彼は微笑んで、私にやわらかい唇を落とした。