流れのままに恋したい ~ 過去に傷ついたふたりの恋物語 ~
ふたりでマンションに帰り、後から入った私が玄関のドアを閉めた瞬間、振り返った彼が私を壁に押し付け、唇を強く押し当てた。


「んん・・あ・・航・・平」

「莉夏・・・俺・・・」

「どう・・・したの?」


『莉夏』と消えそうな声でつぶやいて、私を抱き締めた。


「ごめん・・・俺、勝手に結婚決めて、勝手にご両親のところ行って・・・莉夏に断られるのが怖くて・・・本当にすまない」

「どういう・・こと?」

「俺、卑怯なことしたんだ」

「え?」

「今日、赴任の話を聞いて、真っ先に莉夏のことが浮かんだ・・・どうしたら莉夏を離さずに済むのかって、誰にも触れさせずに済むのかって、そればかり考えてた。そしたら、副部長から莉夏が実家の用で早退したって聞いて・・・」

「それで実家に・・・」

「うん・・・ご両親の許可をもらったら、莉夏もYESって言ってくれるって考えて。結婚も、一緒に行くのも断られたくなくて・・・ひとりで勝手に決めて・・・ごめん」

「航平・・・」

「本当に、ごめん」


不安だったのは、彼だけじゃない。


「航平、私ね、ずっと実家にいたわけじゃないの」

「え?」

「早退して、しばらく、泣いてた」

「どう・・・して?」

「・・・寂しくて。目が覚めた時に、航平がいないのが、寂しすぎて」

「莉夏・・・」

「寂しいのは私だけなのかなって、航平は寂しくないのかなって思ったら・・・」

「そんなこと・・・あるわけないだろ」


そう言って、彼は私の手をつかんで寝室に向かった。

そのまま押し倒されて、彼を見上げる。


「なんか、俺の不安を埋めるみたいで・・・でも、抱いていいかな・・・」


彼はそう言って、私の答えを待っていた。


「それなら、私の不安も埋めてくれる?」


私は身体を起こし、彼の両頬を包んで唇を寄せた。

それに応えるように、彼の唇と舌が動く。


「あぁ、は・・んっ」


彼の舌から熱が送り込まれて、声が漏れた。

彼が私の服を、私が彼の服を脱がせていく。

ただ脱がせるのではなく、脱がせた肌にお互いに指を滑らせながら。


「は・・・あ、ああっ」


あっいう間に欲しくなる。
全裸になる頃には、もういつでもというくらいに潤っている気がしていた。


「莉夏・・・いい・・・かな」

「航・・平・・・きて・・」


彼の準備ができてすぐ、私たちはひとつになる。


「ああっ! あ・・・は・・ぁ」


身体中を甘い痺れが襲う。


「俺、無理・・・だよ。莉夏にこんなに本気なのに、触れられないなんて」


そう言いながら、彼の動きは強さを増す。


「あぁ・・・航・・平・・離れなく・・ない」

「莉夏・・・離さないよ。莉夏は・・・俺のものだから」


確かめるように、私たちは重なり合った。
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