プリンセス・オブ・カグヤ
 なんで、せっかく龍二からプロポーズされたのに。なんでこのタイミングなのよ。私は人を愛しちゃいけないのっ、龍二と一緒にいたい、ただそれだけなのに。
 私は……運命は逆らえないのかしら。

「嘘だ、神楽耶が魔性国の姫だなんて、絶対に嘘だ。そんな国、僕は聞いたことがない!」
「しつこい男は嫌われるわよ? もっとも、人間の男なんて、元々嫌われてるけどね。それなら、現実をお見せしましょうか」

 何、これ……。私の周りが勝手に光出して……。イヤ、何かが私の中に入ってくるわ。ダメよ、『アナタ』になんか、この体は渡さないんだからっ。

 私は得体の知れぬモノに、必死の抵抗をみせる。でも、その力は私の自由を奪い、そして……意思までも奪ってしまった。

「神楽耶……? どこへ行くんだい、それにその格好は……」

 私の制服は、天女が着るような服装へと変化する。それは幻想的であるが、どこか冷たい感じの服装。
 心こそ私が支配しているが、体と言葉は……何者かが支配していた。

「龍二、ごめんなさい。私は月へ戻らねばなりません」
「これで分かったでしょ、神楽耶様は魔性の力を使って、ただアナタと遊んでいただけなのよ」

 違う、そんなことないわよ。私は本気だった。本気で龍二のことを愛してたのよ。お願い、どうかこの気持ちを龍二に伝えて。お願いだから……。

「僕は……。遊ばれていたのか。この二年間のずっと考えていたのも、魔性の力のせいだと……。これは、偽りの感情なのか……」

 龍二、お願い気づいてよ。本当の私はここにいるからっ。偽りの私に騙されないでっ。

 涙を流したくても、表情はまったく変わろうとしない。能面のように、冷たい視線を龍二に送り続けていた。
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