プリンセス・オブ・カグヤ
「その絶望っぷり、私への最高のだわ。これだから、辞められないのよねっ。さぁ、神楽耶様、我らがお城へ帰りましょう。こんな男などすぐに忘れますゆえ」
「えぇ、カナ、早く戻りましょう。母上の待つ魔性国へ」

 なんでよ、これは何かの罰なのっ。素直になれなかった私への罰なのねっ。お願い、体よ動いてっ、声を、私の本当の気持ちを龍二に届けてよっ。

 体の内側でもがくも、それが表に出ることはなかった。私の涙も、声も、想いさえも、魔性の力で内側に閉じ込められる。
 空からは、迎えと思われる小さな船が目の前に降り立った。佳奈さんの力に操られ、私はその船へと乗り込もうとしていた。

「──がう、違うんだ。たとえ、神楽耶が何者であろうとも、僕は神楽耶をはとりにはさせないっ。それに、僕の心は魔性の力なんかには、絶対に屈してなんかいないぞっ!」

 龍二!? 私の声が届いたのね。お願い、私を、この呪縛から救いだして。お願いよ……。

「うるさい人間ね。そこで大人しく見ていなさい。それに、いくら言葉に出したところで、アナタたち人間は私たちの城へたどり着くのは不可能ですから」

 龍二、龍二ー! なんで手を伸ばしてくれないのっ。私を絶対に守ってくれるって、言ったじゃないのっ。手を離さないって約束……してくれたじゃないの。

 内なる悲しみは、佇んでいる龍二には届かず、私は船内へと姿を消した。船は静かに大地を飛び立つと、遠く離れた月へと向かっていった。
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