プリンセス・オブ・カグヤ
「龍二……。どうして、どうしてなの。なんで、私を助けてくれなかったのよ。どうして……」
牢獄に閉じ込められ、私はひとり悲しみに老けていた。
龍二が口だけで手を差し伸ばしてくれなかった。
私を必ず守ると約束したのに。
それなのに……私と龍二の手は離され、二度と会えないこの月へと幽閉されてしまった。
「妾の娘であるのに、なんと情けない姿ですこと。たかが人間の男ひとり、どうでもいいではないの」
「アナタいったい……」
「こうして会うのは初めて、と言った方がいいかしら。妾はエム、ソナタの母親にしてこの魔性国の女王よ」
初めて見る自分の母親。
冷徹な顔であっても、どことなく美しかった。肌は真っ白で、血など通っているのか不思議なくらい。
いや、血など通ってたら、このような冷酷非道なことをできるはずがないのだ。
「アナタが私のお母様なのっ。それならどうして、私と龍二を引き裂いたのよっ。どうして……」
「魔性国において、男など不要。ましてや人間の男などな。それに、この国の王族は赤子のときに地球へ送られ、人間の手で育てられる。それが掟でもある」
「なんでそんなことを……。育てた人に悪いと思わないんですかっ」
今なら自分の言葉を吐き出せる。
私は母親に強く噛み付いたのだ。
「理由など知らぬ。強いて言うなら、ただの遊びかの。人間にしてみたら、月の民を育てられるのだ。むしろ光栄だと思思うがの」
「そんなの、おかしいです。引き離された方は、悲しいじゃないですかっ」
「くだらぬな。妾は魔性国の女王ぞ、人間の感情に興味などない。それに、記憶は完全に消してるのだ。悲しみなど起こりえぬであろう?」
冷たいのは視線だけではない。言葉のひとつひとつが、周囲を凍らせるほどの冷たさである。とても、私の母親だとは思えなかった。
「記憶を消したって……。失われた時間は元に戻らないんですよっ! 私の両親だって、怒られもしたけど、優しくて温かくて、少なくとも、本当の両親はあの人たちですっ」
「カナからの報告だと、記憶を消したと聞いておるが、どうやら元に戻ってしまったようじゃの」
「許さない、許さないわよ。私の両親を、龍二を返してよっ!」
牢獄に閉じ込められ、私はひとり悲しみに老けていた。
龍二が口だけで手を差し伸ばしてくれなかった。
私を必ず守ると約束したのに。
それなのに……私と龍二の手は離され、二度と会えないこの月へと幽閉されてしまった。
「妾の娘であるのに、なんと情けない姿ですこと。たかが人間の男ひとり、どうでもいいではないの」
「アナタいったい……」
「こうして会うのは初めて、と言った方がいいかしら。妾はエム、ソナタの母親にしてこの魔性国の女王よ」
初めて見る自分の母親。
冷徹な顔であっても、どことなく美しかった。肌は真っ白で、血など通っているのか不思議なくらい。
いや、血など通ってたら、このような冷酷非道なことをできるはずがないのだ。
「アナタが私のお母様なのっ。それならどうして、私と龍二を引き裂いたのよっ。どうして……」
「魔性国において、男など不要。ましてや人間の男などな。それに、この国の王族は赤子のときに地球へ送られ、人間の手で育てられる。それが掟でもある」
「なんでそんなことを……。育てた人に悪いと思わないんですかっ」
今なら自分の言葉を吐き出せる。
私は母親に強く噛み付いたのだ。
「理由など知らぬ。強いて言うなら、ただの遊びかの。人間にしてみたら、月の民を育てられるのだ。むしろ光栄だと思思うがの」
「そんなの、おかしいです。引き離された方は、悲しいじゃないですかっ」
「くだらぬな。妾は魔性国の女王ぞ、人間の感情に興味などない。それに、記憶は完全に消してるのだ。悲しみなど起こりえぬであろう?」
冷たいのは視線だけではない。言葉のひとつひとつが、周囲を凍らせるほどの冷たさである。とても、私の母親だとは思えなかった。
「記憶を消したって……。失われた時間は元に戻らないんですよっ! 私の両親だって、怒られもしたけど、優しくて温かくて、少なくとも、本当の両親はあの人たちですっ」
「カナからの報告だと、記憶を消したと聞いておるが、どうやら元に戻ってしまったようじゃの」
「許さない、許さないわよ。私の両親を、龍二を返してよっ!」