プリンセス・オブ・カグヤ
 身も凍る視線に逆らい、私は自分の感情をぶちまける。あのとき龍二が、なぜ助けてくれなかったのか分からない。それなら、ここから脱出して彼に理由を問いただすと決めたのだ。

「ソナタの親は妾であるというのに、困った娘じゃの。イレギュラー、というやつか。長い魔性国の歴史の中で、そういうこともあるであろうな」
「私はイレギュラーなんかじゃいよ! おかしいのは……この国、魔性国の人たちなんだからっ」
「反抗期というやつかの。カナの言う通り、もう少し頭を冷やさせた方がいいかの」

 淡々と話し続ける姿は悪魔そのもの。感情なんてこの人には存在していない。私には分かる、この人は……人の形をした魔物だ。

「私は冷静です。いくらここにいたところで、考えを改めるなんてありませんからっ」
「自惚れるなよ、小娘。妾が魔性の力でお主を傀儡にしないのは、愛情だとなぜ理解できぬのだ。それとも、生ける人形として永遠を生きたいのかえ」

 変わらない表情なのに、その言葉は鋭く私の心に突き刺さる。それは、深い傷を追わせ、恐怖という力で私を支配しようとしていた。

「エム女王陛下、お話中失礼します」
「なんじゃ、騒々しい」
「申し訳ありません。ですが……この国に侵入者が入り込みまして」
「この国に土足で踏み込む愚か者は、いったい何者ぞ」
「はっ、それが、人間の男という情報にございます」

 えっ、まさか龍二が……。でも、そんなわけはないわ。だって、彼は私のことを……。

「そのような不届き者など、さっさと始末してしまうがよい」
「ですがその者は……神楽耶様の名を叫んでおられました」

 嘘……。龍二は本当に来てくれたんだ。私、彼を嘘つきだって決めつけて、謝らなくちゃ、彼になんとしてでも会って謝らないと。

「ほほう、なるほど。よかろう、その者を玉座の間へ通すのだ」
「はっ、仰せのままに」

 理由も分からず牢屋から出されると、私は玉座の間へと連れていかれる。私の瞳には不敵な笑みを浮かべる女王の姿が映っていた。
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