ショップラブ☆(短編)
「また良い小説があったら教えて。また来るよ。」
松田さんは
ほのかな優しい香水の香りを残し
本屋から出て行った。
彼女さんがいたこと。
彼女さんが入院してること。
その為に小説を買っていってあげてたこと。
そんなたくさんのことを知ったから、
松田さんが本屋に来てくれたのに
松田さんと話せたのに
私は全然嬉しい気持ちにはなれなかった。
それに、
私は松田さんに自分の名前も知ってもらえてないし、
進展どころか
単なる“本屋でバイトしてる子”
“自分が働いている店に一度だけきた客”でしかないんだ。
ショックだった。
まるで、もう会うなって神様に言われているかのように
松田さんはそれっきり本屋には来なかった。
また来るよって言ったのに。