そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「悪い話ではないだろう?」
「ずっと父親として見てきたのに、いきなり花嫁になれと言われても」
お父様の花嫁となったら、どんな未来が待っているのだろう。
きっと大人の魅力がたっぷりと詰まった、甘美で淫らな……。
少しはだけたゼノンの姿をつい頭の中で思い描いてしまい、これ以上はいけないわとソフィアは真っ赤に染まった顔を俯かせた。
そんなソフィアの様子を見ていたゼノンは掴んでいた手を離し、足を組んで座り直してから、不敵な笑みを浮かべて宣言する。
「それなら今から俺をひとりの男として見たらいい。俺もこれから、ひとりの女としてお前と接することにする」
ずっと掴まれていた手にゼノンの力の余韻が残っている気がして心が落ち着かない。
これからゼノンとどうやって向き合えばいいのか見当もつかずソワソワしていると、ゼノンの呟きを耳にする。
「さて。どうやって婚約破棄をさせようか」
好戦的な言葉から、ゼノンに振り回される未来の自分が見えた気がして、ソフィアはすっと真顔になる。
自分の知らない設定に、予測不可能な未来。このまま進んで迎えるのがハッピーエンドとは限らない。
ソフィアは両手を組んで、「どうか破滅エンドではありませんように」と心の中で祈りをささげたのだった。