そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
マシューの絶賛の言葉に、共にやってきたハンナはそうでしょうそうでしょうと言った様子で嬉しそうに微笑んで、単調に述べられたルイスのひと言を華麗に聞き流す。
そしてソフィアは三人の反応よりも、じっと自分を無表情で見つめたまま、何の言葉も発さないゼノンが気になって仕方ない。
「お父様、どうかしら」
「……あぁ、似合ってる」
ゼノンの性格からベタ褒めしてもらえるなどとは思っていない。その短い肯定の一言で十分嬉しくて、ソフィアは思わず笑みを浮かべる。
「ミルドフキローアカデミーの制服、懐かしいですね。我々が通っていた頃から変わらない」
「可愛いな。クラウド王子も目を奪われることだろう」
無表情を崩さなかったゼノンだが、ルイスとマシューが交わした言葉が気に障ったらしく、手にしていた書類をくしゃりと強く握りしめた。
「……ほぉ。それなら、ヤツの視界に入らぬよう、しっかりソフィアを隠さねば」
あ、余計なことを言ってしまったといったようにマシューは口を手で覆うが、もう遅い。
隠すとはいったいとソフィアが恐々ゼノンを見上げると、ゼノンは企むような笑みを浮かべた。