そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
素直に感心したソフィアにマシューは訂正を入れ、不安そうにゼノンへ体を向けた。
「前もって決めた通りの日程で必ず王宮にお戻りになってくださいね。私ひとりで対処できる範囲もわずかですし、何よりもあなた様の代理は、俺には荷が重すぎますから」
「わかってる。俺がいない間、よろしく頼むぞ」
ゼノンに楽しそうに肩を叩かれて、「本当に頼みますよ」とマシューは口元をわずかに引き攣らせながら、訴えかけた。
「さぁ、ソフィア、乗れ。俺たちも出発するぞ」
ゼノンはソフィアに声をかけ、先に馬車の中へ乗り込んでいく。続こうとしたソフィアは一旦足を止めてから、マシューのそばへ駆け寄る。
「行って参ります」
「ソフィア、頑張って!」
ソフィアの期待に輝く表情にマシューは微笑ましげに目を細めてから、応援の言葉を力強く返した。
軽く会釈をしてからソフィアは馬車に乗り込み、学校生活に入ってもこれまで同様お世話を続けることになっているハンナも御者の隣へと腰掛ける。
御者が馬の手綱を操り、ゆっくりと馬車が動き出せば、マシューは深々と頭を下げて一行を見送ったのだった。