そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「アルヴィンたちはもう出発したのね」
先ほど「俺たちも」と言っていたのを思い返しながらソフィアが呟くと、ゼノンは「あぁとっくだ」と囁き、ふわっとあくびをした。
向かい合わせに座っているため、その無防備な様子をはっきりと目にし、思わずソフィアは笑みを浮かべる。
いつもより面持ちが幼いからか、可愛らしく感じてしまったのだ。
「とっても眠そうね」
「少しでも書類の束を減らしておいてやろうと、明け方まで机に向かっていたからな」
言いながら眠そうに目を瞬かせてから、ゼノンはじっとソフィアと見つめ合い、ニヤリと笑った。
何か企んでいるんじゃと身構えたソフィアの予感は的中し、座面から腰を浮かせたゼノンは何食わぬ顔で、ソフィアの隣へと移動した。
「お、お父様。なぜ隣に?」
「すまない、少し眠らせてくれ」
微睡みと共にそれだけ呟いて、ゼノンが寄りかかるようにソフィアの肩に頭を乗せる。
ソフィアが「本気ですか⁉」と頬を赤らめながら声をあげても、ゼノンはお構いなしにそのまま寝に入ってしまう。
柔らかな黒髪の感触に鼓動が忙しなく響き、頬の熱がなかなかおさまらない。