そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
恥ずかしくてたまらないのに、もう少しこのままでも良いかなと思ってしまう。
それからしばらくその体勢のままで、ソフィアは窓の外を眺めたり、今だにモザイクがかかって見ることができないゼノンのパーソナルデータを呼び出しては、どうにかして見られないだろうかと試行錯誤してみたりする。
窓から差し込む日差しの温かさと、隣から聞こえる規則正しい寝息が徐々にソフィアの眠気を誘い、だんだんと瞼が重くなっていく。
何度か眠りに落ちそうになりながらもなんとか耐えていると、馬の嗎が聞こえ、動きが止まった。
ぼんやりと窓の外に目を向けて視界に入ってきた校舎に、ソフィアの眠気が吹き飛んでいく。
「お父様、ミルドフキローアカデミーに到着しましたよ!」
ソフィアから軽く膝を叩かれながら報告を受け、ゼノンはゆっくりと目を開いて、体勢を戻しながら「もう着いたのか」と掠れ声で呟く。
程なくして「お疲れ様です。到着いたしました」とハンナが扉を開けた。
ゼノンに続いてソフィアも馬車から降りて、胸の高鳴りを感じながら門の向こうに聳え立つ校舎を見上げる。
今ここから、大好きだった乙女ゲーム『メレディスの祝祭歌』が始まるのだ。