そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ゼノンとソフィアに気を取られていたためか、校舎入り口まであと少しのところで人にぶつかってしまい、咄嗟に倒れかけた人へと手を伸ばした。
「すみません。大丈夫ですか?」
「……えぇ。こちらこそごめんなさい。よそ見をしながら歩いていたから」
そんなやりとりが聞こえて、ソフィアはゼノンの背中を押しながら肩越しにクラウドを見て……すぐさま二度見する。
肩まで伸びたサラサラの薄茶色の髪に、同じく薄茶色の瞳、自分達と同じく制服は真新しいため、新入生で間違いないだろう。
彼女は不安そうにクラウドを見つめて、遠慮がちに問いかける。
「……私、新入生なのだけれど、あなたもそう? 実は、さっき同じ新入生の女の子たちに受付の場所を聞いたら、校舎の外、入り口の近くにあるって教えてくれたの。けれど、なかなか見つからなくて」
記憶にあるセリフにソフィアは思わず息をのむ。
そう。『メレディスの祝祭歌』の始まりは、純粋なメレディスが魔族の女子生徒ふたりに嘘の受付の場所を教えられ、迷ってしまっていたところでクラウドにぶつかり、運命の出会いを果たすのだ。
「新入生の受付場所は校舎の中、一階講堂の手前だけど」