そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「君の名は?」
「ソフィア・アンドリッジです」
「ゼノンの娘が入学するとは聞いていたが、それが君か……私には、色々と別な面影が重なるように見えるが」
イルバクトが最後に小声で付け加えた言葉に、ゼノンは動揺し、視線を泳がせる。
ソフィアの本当の父親のことを、ゼノンは「親友」と言っていた。
ゼノンに学長ではなく先生と呼ばれるイルバクトも、学生時代に出会ったという亡き両親のことをよく知っていたとしてもおかしくない。
イルバクトがそれに関して何か話したそうだが、自分の手前そう出来ずにいるのを、ソフィアはなんとなく感じ取る。
ちょうどコック服姿の男たちが再び講堂に入ってきて、カートワゴンに今度はひと口大のケーキが乗っている。
ソフィアはそれを指差してから、「私、ケーキをいただいてくるわ」とゼノンに告げた。
イルバクトに軽く会釈をしてからその場を離れようとする。
「君のお父さんはとっても優秀で、優しい男だ。誇って良い」
その場を離れようとするとイルバクトにそう声をかけられ、ソフィアは微笑みながらもう一度会釈しコック服の男性へと向かって歩き出した。