そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
光の魔法陣を発動させると、まるで反発するかのように子犬の傷ついた右足に黒い靄が現れでてくる。
咄嗟にソフィアは魔法陣をさらに作り出し、子犬の体を四方から取り囲み、眩い光でそれを抑え込んだ。
やがて、黒い靄は消滅し、傷口が塞がったところで、やっとソフィアは息をつき、徐々に魔力を弱めていった。
「……大丈夫よね?」
不安になって様子を確認すると、子犬はちぎれんばかりに尻尾を振って嬉しそうにソフィアに飛びついてくる。
子犬の小さな頭を撫でて笑顔になりながらも、さっきの黒い靄はなんだったのかしらとソフィアは引っかかりを覚えた。
これまで王宮の森の中で、動物相手に治癒行為は繰り返し行ってきたけれど、あのような現象は初めてのことだった。
「元気になったようだな」
いつの間にか横から身を屈めて、子犬を覗き込んでいたゼノンに、ソフィアは頷く。
「さっきのはいったい……」
一体なんだったのか問いかけようとした瞬間、誰かの強い視線を感じ、ソフィアはぞくりと背筋を震わせる。
ゼノンと、ソフィアの膝の上でくつろいでいた子犬も感じたのか素早く顔を上げて、校舎の方をじっと見つめる。