そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ソフィアも少し遅れてそちらへ目を向けると、すぐに建物の手前に佇むメレディスの姿を見つける。
怒りを体全体で露わにしていて、雰囲気に気圧されそうになるが、メレディスはフイッと顔を背け、そこから立ち去った。
「怖いわ」
「……あいつ、どこかで」
ソフィアとゼノンの呟きが重なり、思わずふたりは顔を見合わせる。
「メレディスよ?」
「え? あぁ、そっちじゃない。校舎の中からこっちを見てたやつがいた」
返ってきた言葉に驚いてソフィアは慌てて校舎を見たが、「もう逃げた」とゼノンが付け加えた。
子犬がソフィアの膝の上を降りて、寮の方から駆けてきた親だと思われる同じ毛色の成犬に向かって尻尾を振りながら走り出す。
親犬が子犬の匂いを嗅いだ後、ソフィアに向かってひと吠えする。
そのまま二匹はどこかへ走っていってしまい、ソフィアはポツリと呟く。
「子犬が怪我をしていたことを保健医に伝えておいた方がいいわね」
「それは私が伝えておこう。先のような現象が起きていないか確認もしなければならないし」
険しい顔つきでやってきたイルバクト学長に、ソフィアは「お願いします」と頭を下げる。
「闇の魔力は時として災いの種となる。用心しておくに越したことはない」