そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
図書館が近くなれば王宮に勤める魔族が、そして許可を得て敷地内に入ってきたのだろう町の民の姿もあり、ソフィアに対する辛辣さが一気に増幅する。
「生贄姫よ」
図書館入り口で、すれ違った女性の魔族ふたりが嘲笑うようにそう囁いた。
ソフィアはつい足を止めて振り返ると、ふたりは足を止めぬままに、ソフィアをちらりと見て、口元に笑みを浮かべる。
見下されているのがはっきりとわかる笑い方に、ソフィアはうんざりとため息をついて、「行きましょう」と共に足を止めたハンナへ言葉をかけた。
武族への捧げものであるから、生贄姫。
嫌な響きだわと苛立ちを募らせつつ、借りていた本を返却し、半魔族がまた来たぞと囁く大人たちのチクチクした視線を感じながら児童向けの本が置かれている場所へ。
「さっきの本の続きを読みたいの。三冊くらいまとめて借りて行っても良い?」
図書館に頻繁に来なくても済むようにお願いすると、ハンナもそう思っていたらしく「えぇ、もちろんです。そうしましょう」とホッとした顔で快諾する。
長く続く物語であるため、本棚にはそのシリーズの本がずらりと並んでいる。ソフィアが先ほど返却したのが一巻目なので、その続きへと手を伸ばす。