そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
受付の女性から「あなたが初級編のこの二冊の本を読むの?」といった眼差しを向けられつつ貸し出しの手続きを終えて、図書館を出ようとした時、出入り口近くの部屋の扉がばたりと開けられ、そこから少年と執事らしき男性が出てきた。
「お待ちください、まだ授業は終わっておりません」と少年を追いかけつつ執事の男が声をかける。
聞く耳持たずでずんずん進んできた少年の足が不意に停止する。ソフィアと目があったせいだ。
「アルヴィンさま、こんにちは」とソフィアが膝を折って慌てて挨拶するが、彼は高圧的にふんと鼻を鳴らすだけ。
彼は、アルヴィン・アンドリッジ。ゼノンの甥であり、ソフィアの従兄弟にあたる少年だけれど、まったく仲良くない。
「やる気がないようですし、本日はここまでにします」
ふたりに続けて部屋から出てきた男性が、アルヴィンへため息まじりに冷たく言い放つ。
そこの個室で勉強をしていたが、アルヴィンが嫌になって飛び出してきた。
そんな感じだろうと予想しながら黙って眺めていると、アルヴィンの教育係らしき男性がソフィアとハンナを順番に見た。
「……最近、ソフィア姫が勉強に熱心でいらっしゃると小耳に挟んでおりましたが、どうやら事実のようですね」
「はっ、勉強したところで無駄だろ。半魔族が」