そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「もし仮に、どこかの王子と婚約することになった時に恥ずかしくないよう、学を磨いておこうと思いまして」
なんとか理由を捻り出した後、ソフィアはゼノンを見上げて、口元にぎこちない笑みを浮かべた。
「娘が優秀な方が、お父様も鼻が高いでしょう?」
いくら毛嫌いしている娘といえども、「魔王の娘のくせに不出来だ」と武族から文句を言われるより、「さすが魔王の娘だ」と感心された方が気分もいいだろう。
そんなことを考えながら問いかけたソフィアをゼノンはちらりと見た。
それには何も答えず、表情も変わらずで再び沈黙が落ち、何を考えているのか全くわからないわとソフィアは遠い目をする。
乙女ゲーム『メレディスの祝祭歌』をプレイした記憶から、これから自分が会うことになるだろう王太子クラウドの生真面目な性格はしっかり掴めているため、こういう時に何を話せばクラウドが喜びそうかは予想できる。
しかし、残念ながらゼノンは攻略対象でなかったため見当がつかなく、その上、気分を損ねるような発言をしてしまったら首をはねられてしまいそうで、歩みよるのも怖い。
ゼノンは書棚から二冊ほど掴み取って、ソフィアのいるテーブルの方に向かって歩き出した。